不死身のパフォーマー ミリン・ダヨ

ミリン・ダヨ
1912‐1948
脅威の串刺しパフォーマー
近代七不思議の一つ
1945年当時、世界を震撼させた"不死身"のパフォーマー。
エスペラント語で"素晴らしい"の意味を持つ「ミリン・ダヨ」の名で数々の驚異的なパフォーマンスを行った。
本名は、アーノルド・ゲリット・ヘンスケンズと言い、1912年、オランダロッテルダムに生まれた。
幼い頃から身の回りで起きる奇妙な出来事を不思議に感じていたと言うダヨは、20代の頃は、デザイン会社に勤務するごく普通の会社員であった。
しかし、33歳になったある日、突然、自分の身体が不死身体になっている事に気付いたのだと言う。
かねてより唯物的で物質主義的な社会思想が戦争や不幸ばかりを招くことに反感を持っていたダヨは、この不死身の肉体を通して、人々が理解する現実以上の世界が存在する事を世間に知らしめようと考えた。
連日、街のパブに出向いて、そこに居合わせた人々に刃物を渡し、それで自分の体を突き刺してもらう過激なパフォーマンスを始めると、ダヨの名前は瞬く間に世間に知れ渡った。
更に多くの人々に"超現実"を示すため、アムステルダムへと活動の場を広げたダヨは、その地で自分の体をサーベルで貫く助手となる「グルート」に出会う。
ダヨとグルートは、毎日の様に街の音楽ホールのステージに立ち、フルーレ(フェンシング用の剣)やサーベルを用いて身体の前後左右を縦横無尽に貫く過激なパフォーマンスを行い、観客達の度肝を抜いた。
傷口から血は流れず、ダヨ本人も全く苦痛を感じていない様子に人々の目は釘付けとなったが、この非常に明解かつ、きな臭いパフォーマンスに科学者達は、直ぐさま懐疑的な眼を向けた。
人間の臓器を剣で貫いて無事で済むはずがない。至って正常な反応である。
科学者達は、大学の研究室にダヨを招いて、その場で"串刺し"を行ってくれるよう頼んだ。
ダヨは、快く応じるといつもの様にグルートがダヨの身体を貫いて見せる。
学者達は、その状態のままレントゲン撮影してくれるようダヨに申し出た。
ダヨが快諾すると、‶串刺状態″のまま数々の科学的な検証が行われる事となった。
レントゲン写真には、確かに肺や心臓など主要な臓器を剣が貫いている様子が映し出されていた。ダヨがいかに異常体質であると仮定しても、学者達は首を傾げるより他は無かった。

そして、剣で貫いた穴にゴムチューブを差し込んで、先端から水を放出させる実演により、明らかに物体が身体を貫通している事が証明された。
流石の科学者達も、剣やチューブがダヨの肉体を貫通している事は認めるしか無かったが、後の調査により様々な仮説が生まれた。
異常脂質によって傷口の止血効果が高く、大量出血に至らないとする特異体質説、予め身体に空けた穴にチューブを設置して、その内部を貫く事で重症を防ぐというトリック説などが唱えられたが、どれも解明には至らなかった。
特異体質にも限界があるし、チューブ設置の場合は、少しでも剣が外れると即座に致命傷に至るため、毎晩の様にそれも同時に数本の剣を縦横から突き刺すなど、むしろ非現実的であるという結論であった。

ダヨは、これらの奇跡について、自分に指示を与えてくれる守護天使の力によるものだと言い、天使達の啓示に従って実行しているに過ぎないと公表していた。
しかし、最後の時は突然にやって来た。ダヨが自宅にいる時、またいつもの守護天使の声が聞こえてきた。
その内容は、釘を食べなさいと言うものであった。そして、その食べた釘を麻酔をかけないで取り除いてもらえと言う不可解かつ凄惨な内容であった。
それまで何の疑いもなく守護天使の声に従ってきたダヨは、躊躇なく釘を食べる。
数日後に医師が確認するとダヨの体内には確かに釘が存在していた。
そして手術の段になって"麻酔をかけないでほしい"とのダヨの要望に反し、医師は麻酔をかけて除去手術を行った。
開腹手術を行うのだから当然の事である。
ダヨが、自宅でぐったりしているのをグルートが発見するのは、それから数日後の事であった。
いつもの様に瞑想している様に見えたが、どこか不自然に思い念のために確認してみるとダヨは意識を失っていた。
病院での検視により、大動脈破裂による死亡が確認された。"不死身の肉体"を持つを男の静かなる最後であった。
不死身を自覚して、パフォーマンスを開始してから僅か3年間の出来事であった。
これが、仮にトリックであったとしても、実際に異物が身体を貫いているのは事実であり、それ自体が既に驚愕のパフォーマンスだと言える。
或いは、ダヨの言う守護天使による力で、人々に対する何らかのメッセージであったのかも知れない。
今となっては、真実を知る術はないが、現代で同じ事が出来る人間は存在しないのではないだろうか。
串刺パフォーマンス 実写映像
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