撃破王 ハンス・ウルリッヒ・ルーデル

ハンス・ウルリッヒ・ルーデル
1936-1912
~出撃こそ我が人生~
撃破王の伝説
第二次世界大戦中のナチスドイツの空軍大佐であり、三度の食事よりも出撃が大好きという希代の出撃マニアとして知られている。
その常軌を逸した出撃回数と類稀なる戦果により"撃破王"と称えられた。
戦車などの地上兵器に対する"急降下爆撃"を主な任務としていたが、空中戦で敵の戦闘機を撃墜する事もあった。
公式記録には、出撃回数2,530回、撃破した戦車519両、装甲車両800台、戦艦1隻、駆逐艦2隻、上陸艦艇70隻以上、戦闘機9機を撃墜とあり、もはや人間業とは思えない驚くべき戦果が記録されている。
そのあまりの戦力を恐れたスターリンから"ソ連人民最大の敵"と名指しされ、ルーデルの首には、当時としては破格の10万ルーブル(現:数億円)もの懸賞金が賭けられていたと言う。
その病的とも言える出撃マニアぶりが伺える逸話が残されている。
「朝起きて出撃して戻って朝飯食って牛乳飲んだら出撃して、昼飯食って牛乳飲んだら出撃して、夕飯食って牛乳飲んだら出撃して帰ってシャワーを浴びたら寝るを毎日繰り返していたら、いつの間にか戦車500両を撃破して10個以上の勲章をもらって、撃破王と呼ばれていた」と言うものである。
初戦で獲得した「二級鉄十字章」に始まり、ナチスドイツのほとんどの勲章が授与されたが、それでもルーデルの働きに見合わないとして、ついに「黄金柏葉剣付ダイアモンド騎士鉄十字勲章」なる無理やり感に溢れた特別な勲章が授与された。
この勲章は便宜上、複数個が製作されたがルーデル以外に手にした者は無く、事実上ルーデル限定の勲章であったと言われている。

英雄となったルーデルの死が敵国の宣伝に利用される事を恐れたヒトラーは、彼に地上勤務を命じた。
命令に従い、やむ無く一度は地上に降りたルーデルであったが、いてもたっても居られず、外部に知られないよう密かに出撃を繰り返していたと言う。
その"隠密出撃"による戦果は、他者の記録として偽装されていた為、ルーデルの実際の戦果は公式記録を遥かに上回るものであったと言われている。
その後、地上勤務が解かれたルーデルは、例の‶黄金付″の特別な勲章を受ける代わりとして、二度と地上勤務を命じないとの約束まで取り付けている。
また、敵の戦車や艦艇を撃破するだけでなく、自らも度々、撃墜されている。
ある時に対空砲火を浴びて撃墜され、同乗していた相棒のガーデルマン曹長と共に野戦病院へと運び込まれた。

その後、戦争も終盤に差し掛かった頃、またも対空砲火を浴びたルーデル機は、今度は40㎜砲弾の直撃を受けてルーデル自身の右足が吹き飛ばされてしまった。
後部座席のガーデルマン曹長に足が無くなった事を報告したが、足が無くなってそんなに冷静でいられるはずがないと一笑に付されたと言う。
しかし、実際に右足は無くなっていた。
やむを得ず病院で緊急手術を受ける事になったが、怪我が治るまでしばらくソ連の戦車が破壊できないと言って悔しがっていたと言う。
2カ月後には義足をつけて戦線への復帰を果たし、以前と変り無く”撃破”の日々を送っていいたが、間もなくして終戦が訪れた。
これにより、4年余りに及んだルーデルの戦いも終わりを告げ、ようやく地上に落ち着く事となった。
最終階級は大佐であった。
終戦後は、アルゼンチン政府からの要請を受け、アルゼンチンへと渡航する。
空軍士官学校の教官として操縦法などを教える傍ら、武器の販売や軍事コンサルタントなどの事業でも成功したと言う。
また、義足であるにも関わらずテニスや水泳、スキーなどのスポーツでも活躍し、アルペンスキーでは南米選手権で優勝するほどの腕前であったと言う。
そして、趣味の登山では、南米の最高峰を含むアンデス山脈の数々を登頂して廻った。
アルゼンチン政府との契約終了を機に西ドイツに帰国したルーデルは、その類稀なる戦闘経験から爆撃機の設計顧問として軍需企業に招かれた。
そして、大戦に散った多くの将兵達の鎮魂の意を込めた記念碑の建立にも力を注いだ。

JU87型航空機「通称シュトゥーカ」
後年、何故あれほどの出撃が可能だったのかとの質問に対して、「私には、これと言う秘訣はなかった」と述べており、前代未聞の驚異的な戦果を成し遂げたルーデルとガーデルマン曹長が搭乗した急降下爆撃機JU87型航空機は、急降下を目的する特性から機体が重い上に速度も遅く、操縦が困難とされる機体であった。
ハンス・ウルリッヒ・ルーデル
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