弓 聖 阿波 研造

阿波 研造
あわ けんぞう
1880-1939
心で射る~
日本弓術の真髄
宮城県出身の弓術家であり、日置流弓術 (へきりゅう)の免許皆伝を受け"弓聖"と称えられた。
1917年の大日本武徳会演武会では、放つ矢の全てを的中させ日本一の栄誉に輝いた。
翌年、その功績を称え武徳会から弓道教士の称号が授与された。
技術的な弓術を否定し、弓道として"道"を究めると言った言精神性に重きを置き、狙う的と自分が一体となるならば狙わなくても、たとえ目を閉じていても的中せる事が可能であるとし、実際に目を閉じたままで放たれた矢は見事に的の中心を射抜いて見せた。
阿波の弓道における精神性を現した面白いエピソードがある。
阿波が説く、”心で射る弓”の合理性に疑問を抱いたドイツ人哲学者であり、阿波の門下生でもあったオイゲン・ヘリゲルは、的が見えているのになぜ狙わずに感覚で射るべきなのかと質問した。
すると阿波は、深夜の道場にヘリゲルを呼び出した。
全く的が見えない暗闇の中で阿波が2本の矢を放つと、1本目の甲矢は的の中心を射抜き、2本目の乙矢は、甲矢の矢筈(矢の末端)に当たり、甲矢を貫いて的中したと言う。
阿波によると1本目の甲矢は驚くほどでは無い、慣れ親しんだ道場なら感覚で的の位置も解ろうとした上で2本目の乙矢についてはどう考えるかとヘリゲルに投げ返した。
これに感銘を受けたヘリゲルは、以降の研鑽に励み、後に五段を取得するまでの腕前になったと言う。
生半可な感覚では、技術には及ばないものであるが、達観した"超感覚"を備えるなら、技術を凌駕する事を証明して見せた阿波の弓道は、今日の日本弓道の礎となっている。
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